気候変動への適応

大気中のCO2濃度は上昇を続けています。

産業革命以来、人間は石油や石炭などの化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出し、経済を成長させてきました。その結果、大気中のCO2濃度は作業革命前に比べて40%も増加しました。

GOSATによる世界のCO2濃度分布観測結果

二酸化炭素濃度分布観測結果
原初のデータ提供:JAXA/NIES/MOE
出典:環境省「COOL CHOICE」ホームページ

岩手県の平均気温も上昇傾向にあります。

このグラフは1924年から2018年の間の盛岡の年平均気温をグラフ化したものです。
盛岡では年平均気温が100年あたり1.7℃の割合で上昇しています。

盛岡の年平均気温偏差

盛岡の年平均気温偏差の図
提供:盛岡地方気象台

平均気温が上昇するにつれて、異常気象が増えると予測されています。

近年、集中豪雨や猛暑といった異常気象による災害が各地で発生し、甚大な被害が報告されています。また、世界中の氷河が地球温暖化等によって縮小し続け、それに伴って海面水位も上昇し続けています。人間が日々の暮らしの中で排出している温室効果ガスにより、地球の平均気温が上昇しており、今後も平均気温が上昇するにつれて、極端な気象現象が増えることはほぼ確実であると考えられています。

気温上昇に伴う気候変動に備える「適応」の取組が必要です。

省エネの取組や再生可能エネルギーの普及、植物によるCO2の吸収など、温室効果ガスの排出量を減らしたり、吸収の対策を行う「緩和」の取組を進めるとともに、すでに起こりつつある気候変動の影響を防止・軽減するための備えや、新しい気候条件を利用する「適応」に取り組む必要があります。

2つの温暖化対策:緩和と適応
出典:平成30年度岩手県気候変動適応方針

具体的にどんな適応策があるの?

県では、岩手県気候変動適応策取組方針を定め、「農業・林業・水産業」「水環境・水資源」「自然生態系」「自然災害・沿岸域」「健康」「産業・経済活動」「県民生活等」の7つの分野について、取組を進めています。
取組方針に定めている取組をいくつか紹介します。

食を守るための「適応」

米やリンゴなどの農作物は、高温による生育不良や栽培適地の変化等による品質低下などが懸念されているため、県では影響調査や温暖化に対応した品種の選抜等を進めています。
また、水産業では、海水温の上昇による海洋生物の分布域の変化や、収穫量への影響が懸念されています。具体的には、岩手県では鮭の分布域の北方移動、ワカメの生長に必要な栄養塩の減少による収穫量の減少、河川でふ化した仔魚の生存率の低下によるアユの減少など様々な影響が予測されることから、漁況予測技術の開発や水産物の影響調査等を進めています。

◯白未熟粒の発生形態

白未熟粒の発生形態
提供:農研機構九州沖縄農業研究センター

登熟期の高温障害によって、粒内部のデンプンやタンパクの蓄積が不十分となり、乳白色化して等級を下げる。

◯リンゴの日焼け

リンゴの日焼け
提供:岩手県農業研究センター

◯日本近海の海域平均海面水温(年平均)の長期変化傾向(℃/100年)

日本近海の海域平均海面水温の長期変化傾向
出典:気象庁ホームページ

気象災害から身を守るための「適応」

過去の観測を上回るような短時間強雨が増加しています。大雨による河川の氾濫や下水道の氾濫(内水氾濫)、浸水被害を防ぐためのインフラ整備や、警戒避難体制の強化をすることも「適応」です。天気予報や防災アプリを確認したり、ハザードマップ(洪水被害予想地図)や避難経路を確認し、気象災害から身を守りましょう。
県では、洪水被害の防止・軽減のための河川改修や、大雨等によって発生する山地災害の被害を防ぐための森林整備等を進めているほか、また、東日本大震災で失われた海岸防災林再生のための植樹等も行っています。

記念植樹
再生記念植樹会(野田村前浜地区)
出典:岩手県ホームページ

健康を守るための「適応」

岩手県では、21世紀末には平均気温が3℃上昇すると予測されており、熱中症や感染症の増加が懸念されているほか、デング熱等の感染症を媒介する蚊(ヒトスジシマカ)の生息域の拡大が岩手県でも確認されています。水分補給をこまめにしたり、エアコンの設定温度を適度に保つことによって熱中症を予防したり、虫刺されに気をつけたりしましょう。
県では、学校を中心とした県民への熱中症予防の普及啓発・注意喚起や、ヒトスジシマカの生息域調査などを実施しています。

ヒトスジシマカの画像
ヒトスジシマカ
出典:岩手県環境保健研究センターホームページ

産業・経済活動や県民生活を守るための「適応」

製造業、商業、建設業等の各種の産業においては、豪雨や強い台風等、極端現象の頻度・強度の増加が、甚大な被害をもたらす可能性があります。また、生活においても、気温の上昇等が、快適な生活を送るうえでの支障や季節感の変化等をもたらす可能性があります。
県では、自立・分散型エネルギー供給体制の構築や水素利活用構想、インフラ・ライフラインの迅速な応急措置及び復旧体制の整備等を進めています。

気候変動の観測
出典:「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018」を元に加工

CO2排出量を抑える取組と併せて、気候変動の影響に適応していくため、私たち一人ひとりができることに取り組んでいきましょう。

参考ホームページ・資料

全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
http://www.jccca.org/
気候変動適応情報プラットフォームウェブサイト
http://www.adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/index.html
岩手県「2019年度 岩手県気候変動適応策取組方針」
https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/kankyou/seisaku/ondanka/1018311.html